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測量士として独立を考えているものの、必要な資格や手続き、開業資金、独立後の収入や営業方法など、何から準備すればいいのか悩んでいませんか?
測量士の独立は、収入アップや働き方の自由度向上が期待できる一方で、初期投資や顧客獲得など課題もあります。成功するには事前の入念な準備が不可欠です。
そこでこの記事では、測量士として独立を目指す方へ向けて、必要な資格や許認可、開業費用、独立までの流れ、顧客獲得方法、注意点について解説します。独立の判断材料や準備の参考としてください。

測量士の独立とは、会社に所属せずに個人で測量業を営むことです。
独立を理解するには、次の2つを知っておく必要があります。
それぞれ説明していきます。
測量士は、土地の位置や面積、高さなどを正確に測る専門家です。
建物を建てる前の土地調査や、道路を作る際の地形測定を行います。測量機器を使って現地で測定し、そのデータをもとに図面を作成します。
公共工事から民間の建築まで、幅広い分野で活躍できる仕事です。独立後も、この基本的な業務内容は変わりません。
測量士と測量士補では、業務の権限が大きく異なります。
| 項目 | 測量士 | 測量士補 |
|---|---|---|
| 測量計画の作成 | ○ | × |
| 測量の実施 | ○ | ○(測量士の指示のもと) |
| 測量業者登録の技術者要件 | ○ | × |
| 試験合格率(令和2年) | 7.7% | 30.3% |
測量業者登録には、営業所ごとに常勤の測量士を1人以上配置する必要があります。測量士補の資格だけでは、この要件を満たせません。
独立開業する本人が測量士資格を持っていれば、営業所が1つの場合はこの要件を満たせます。測量士補から測量士にステップアップするには、測量士試験に合格するか、実務経験を積んで申請する方法があります。

測量士が独立することで得られる、測量業界特有のメリットがあります。
それぞれ説明していきます。
測量業者登録を行えば、国や地方自治体が発注する公共測量事業の入札資格を得られます。
公共事業は案件規模が大きく、安定した収入源になります。実績を積めば継続的に受注できる可能性が高まります。
会社員の場合、大規模案件の利益は会社に入りますが、独立すれば自分の収入になります。
測量業の粗利益率は平均52.7%です。建設業全体の平均25.95%と比べて約2倍の利益率を確保できます。
利益率が高いため、売上に対して手元に残る利益が多くなります。実力と営業力次第では、年収500万円から1000万円以上を目指すことも可能です。
土地家屋調査士や行政書士などの資格を併せ持てば、測量だけでなく登記申請や許認可申請まで一貫して対応できます。
これにより顧客の利便性が高まり、受注機会が増えます。複数の専門資格を活かすことで、測量業界での競争力が向上します。

測量士が独立する際には、測量業界特有のデメリットも存在します。
それぞれ説明していきます。
測量にはGPSやトランシット、レベルなど専門的な機器が必要です。
これらの機器は精密で高性能なため、初期投資として数百万円かかるケースもあります。機器のメンテナンス費用や買い替え費用も継続的に発生します。
独立前に十分な資金計画を立てておく必要があります。
測量作業は屋外で行うため、雨や雪などの悪天候時には作業ができません。
天候不良が続くと仕事が途切れ、その期間の収入はゼロになります。また、公共事業は年度末に集中しやすく、時期によって仕事量に大きな波があります。
閑散期の収入減少に備えた資金管理が欠かせません。
測量業者登録を行うには、営業所ごとに常勤の測量士を配置する義務があります。
一人で開業する場合は問題ありませんが、事業拡大時には新たな測量士の確保が必要です。測量士資格を持つ人材は限られているため、人材確保に苦労するケースも多くあります。

測量士として独立した場合、収入は実力と営業力によって大きく変わります。
独立後の年収について、以下の項目で説明していきます。
それぞれ説明していきます。
測量士として独立した場合、国土交通省が公表する設計業務委託等技術者単価を基準に年収を算出できます。
令和6年3月時点の測量技師の技術者単価は、1日あたり37,665円です。測量士が1人工(1日)の作業を年間180日実施すると、売上は約680万円となります。
測量業は経費があまりかからないため、利益率は80%以上が見込めます。売上680万円の場合、手取りは約544万円です。年間240日稼働すれば売上約900万円、手取り約720万円となります。
さらに、人工(労務費)に加えて、測量計画立案、機器調達、成果品作成などの付加価値を提供することで、会社員時代を大きく上回る収入が可能です。
営業力と実績次第で、年収1000万円超も現実的な目標となります。
測量士の年収を、会社員と独立後で比較すると以下のようになります。
| 区分 | 平均年収 |
|---|---|
| 会社員としての測量士 | 約501.6万円 |
| 一般的な会社員 | 約443.3万円 |
| 独立後の測量士(年間180日稼働) | 約544万円 |
| 独立後の測量士(年間240日稼働) | 約720万円 |
| 独立後の測量士(年間300日稼働) | 約900万円 |
会社員の測量士は企業規模によって年収が固定されますが、独立後は稼働日数に応じて収入が増えます。
会社員は安定していますが、独立後は収入の上限がなく、努力次第で高収入を実現できます。

測量士として独立する場合、測量士資格だけでなく測量業者登録が必須です。
独立に必要な資格と許認可について、以下の項目で説明していきます。
それぞれ説明していきます。
測量士資格を取得するには、主に4つのルートがあります。
国家試験に合格する方法で、受験資格は不要です。年齢・性別・学歴・実務経験に関係なく誰でも受験できます。
文部科学大臣認定の学校で測量に関する科目を履修し、卒業後に実務経験を積む方法です。大学卒業なら1年、短大・高専卒業なら3年の実務経験が必要です。
測量に関する養成施設で所定の課程を修了することで、測量士資格が取得できます。
測量士補の資格を取得後、測量士試験に合格するか、専門学校で1年学ぶ、または実務経験2年を積むことで測量士になれます。
測量業を営むには、測量業者登録が必須です。
営業所ごとに常勤の測量士を1人以上配置する必要があります。ここでいう測量士とは、測量士資格を有し、測量業者として登録した測量士を指します。
法人の場合は90,000円、個人の場合は30,000円(平成18年4月1日以降に測量士登録を受けた場合は15,500円)の登録免許税が必要です。
登録の有効期間は5年間です。更新時には15,500円の手数料がかかります。
主たる営業所が所在する都道府県を管轄する国土交通省地方整備局に申請します。
測量士として独立する際、業務の幅を広げるために役立つ資格があります。
測量した土地の情報をもとに登記や許認可申請を行うための資格です。測量業務から登記まで一貫して請け負えるため、顧客の利便性が高まります。
土地家屋調査士による登記後に行う許認可申請には、行政書士の資格が必要です。測量から登記、許認可申請まで一貫して対応できるため、他社との差別化が図れます。
GISやリモートセンシング技術を活用した高度な測量業務に役立つ資格です。最新技術を駆使した測量サービスを提供できます。

測量士として独立開業する際には、初期費用として200万円〜500万円程度が必要です。
最も大きな出費は測量機器の購入費用で、次に登録申請費用、事務所費用と続きます。開業後の運転資金も考慮しながら、資金計画を立てる必要があります。
測量士として独立する場合、測量機器の購入費用が最も大きな初期投資となります。
| 機器名 | 新品価格 | 中古価格 |
|---|---|---|
| トータルステーション | 50万円~200万円 | 20万円~100万円 |
| GPS測量機器(GNSS) | 30万円~150万円 | 15万円~80万円 |
| レーザー距離計 | 5万円~20万円 | 3万円~10万円 |
| 三脚・ピンポール | 5万円~15万円 | 2万円~8万円 |
トータルステーションは測量の基幹となる機器で、精度や機能によって価格が大きく異なります。GPS測量機器はGNSSレシーバーやアンテナなど一式揃える必要があり、衛星測位システムを活用した測量には欠かせません。
測量機器は中古品を活用することで初期費用を大幅に抑えられますが、精度や保証面を考慮して選ぶことが重要です。
測量業者として営業するには、測量業者登録が必須です。
| 費用項目 | 法人 | 個人 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 9万0,000円 | 3万0,000円(※) |
| 行政書士への依頼費用 | 10万円~20万円 | 10万円~20万円 |
| 更新手数料(5年ごと) | 1万5,500円 | 1万5,500円 |
※平成18年4月1日以降に測量士登録を受けた場合は1万5,500円
行政書士に依頼すれば手続きがスムーズですが、自分で申請すれば費用を抑えられます。ただし書類の不備で審査が遅れる可能性があるため、開業スケジュールに余裕を持たせることが大切です。
測量機器と登録申請費用以外にも、様々な費用がかかります。
| 費用項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 事務所賃貸(敷金・礼金) | 30万円~50万円 | 自宅利用なら不要 |
| 事務所賃貸(月額家賃) | 5万円~15万円 | 自宅利用なら不要 |
| ソフトウェア導入費用 | 10万円~30万円 | CAD・測量データ処理ソフト |
| ホームページ作成 | 10万円~30万円 | 集客の要 |
| 名刺・チラシ印刷 | 5万円~10万円 | 営業ツール |
| 運転資金 | 100万円~200万円 | 6ヶ月分の生活費・事業経費 |
事務所を自宅にすれば賃貸費用を大幅に削減できます。ホームページは集客の要となるため、しっかりとした投資が求められます。
忘れてはいけないのが運転資金です。開業直後は収入が安定しないため、6ヶ月分の生活費と事業経費を確保しておけば、焦らず営業活動に集中できます。
これらを合計すると、測量士として独立開業する際の初期費用は200万円〜500万円程度が目安です。

測量士として独立するには、資格取得から事業開始まで4つのステップを踏む必要があります。
計画的に準備を進めることで、スムーズな独立開業が実現できます。
まず測量士資格を取得します。
国家試験に合格するルートが最短ですが、大学等を卒業して実務経験を積むルートや養成施設を卒業するルートもあります。自分の状況に合った方法を選びましょう。
測量会社などで3年~5年程度の実務経験を積みます。
基準点測量、現況測量、用地測量などの実務スキルを習得し、業界の人脈を構築します。この期間で独立後の取引先候補との関係を築くことが重要です。
管轄する国土交通省地方整備局に測量業者登録を申請します。
営業所ごとに常勤の測量士を1人以上配置することが要件です。申請から登録完了まで約70日かかります。
測量機器(トータルステーション、GPS測量機器など)を購入し、事務所を確保します。
CADソフトや測量データ処理ソフトも導入し、ホームページを作成して営業準備を整えます。開業6ヶ月分の運転資金を確保しておけば、安心して営業活動を開始できます。

独立後の最大の課題は顧客獲得です。
測量士が独立後に安定した収益を得るには、公共事業への入札参加、民間企業との取引開拓、同業者との連携、Web活用による集客という4つの方法があります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った営業戦略を立てましょう。
国や自治体が発注する公共測量に入札参加する方法です。
公共事業は支払いの確実性が高く、安定した収益源になります。入札参加には測量業者登録が必須で、競争参加資格審査を受けて有資格者名簿に登録される必要があります。
ただし公共事業は実績や技術者数で評価されるため、独立直後の受注は難易度が高いです。小規模な自治体の案件から実績を積み上げていくことが現実的な戦略です。
建設会社やハウスメーカー、不動産会社などの民間企業と直接取引する方法です。
民間測量は公共測量に比べて参入しやすく、人脈や営業力次第で受注できます。実務経験中に築いた人脈を活用し、元同僚や取引先企業に営業をかけることが効果的です。
継続的な関係を築くことで安定した受注が期待できます。価格だけでなく、迅速な対応や丁寧なコミュニケーションで信頼を獲得しましょう。
測量会社や土地家屋調査士事務所と協力関係を築く方法です。
大手測量会社が受注した案件の一部を下請けとして受注したり、繁忙期の応援として仕事を回してもらえます。土地家屋調査士や行政書士との連携も有効で、測量業務を紹介してもらえる可能性があります。
同業者との関係構築には業界の交流会や勉強会への参加が効果的です。
ホームページやSNSを活用して情報発信し、顧客を獲得する方法です。
ホームページに業務内容や実績、料金の目安を掲載することで、顧客からの問い合わせが期待できます。「地域名+測量」などのキーワードで検索上位を目指すSEO対策も重要です。
SNSでは専門知識を発信し、測量業務の認知度を高めます。測量の基礎知識や測量機器の使い方、現場のエピソードなどを投稿すれば、潜在顧客との接点を作れます。
GoogleビジネスプロフィールやMEO対策で地域検索の露出を増やすことも有効です。
測量士として独立する際には、事前に把握しておくべき重要な注意点があります。
主な注意点は下記の5つです。
これらを理解して準備することが独立成功の鍵です。
測量業者登録には営業所ごとに常勤の測量士を1人以上配置する必要があります。
自分が測量士資格を持っていれば、営業所が1つの場合はこの要件を満たせます。しかし複数の営業所を持つ場合は、各営業所に常勤の測量士を配置しなければなりません。
常勤とは実際にその営業所で勤務することを意味します。名義だけの配置は認められず、勤務実態を証明する書類の提出が求められます。
独立前に十分な実務経験を積むことが重要です。
基準点測量、現況測量、用地測量などさまざまな測量業務を経験し、測量機器の操作や計算、図面作成まで一通りできる技術力が必要です。目安として3年〜5年程度の実務経験が推奨されます。
実務経験を通じて業界の人脈を構築することも独立後の受注に直結します。独立してすぐに仕事が舞い込むわけではないため、実務経験中に将来の顧客候補との関係を築いておきましょう。
開業資金は余裕を持って準備する必要があります。
初期費用として測量機器の購入費用だけで200万円〜500万円程度かかります。さらに登録申請費用、事務所費用、ソフトウェア導入費用なども必要です。
独立直後は収入が安定しないため、開業6ヶ月~1年分の運転資金を確保しておくことが推奨されます。景気の波を直接受けやすく、受注が途切れる時期もあるため、資金計画は慎重に立てましょう。
独立前に顧客獲得の見込みを立てることが重要です。
実務経験中に築いた人脈を活用し、独立後に仕事を発注してくれる見込み客を事前に確保しておくことが理想的です。営業登録後すぐに仕事が舞い込むわけではないため、案件ルートを確保しておくことがスムーズなスタートにつながります。
公共事業の入札参加や民間企業との取引、同業者との連携など、複数の営業チャネルを想定しておくことも大切です。
独立すると測量業務以外に事務作業や経営管理の負担が発生します。
会計処理、税務申告、請求書発行、入金管理、契約書作成など、会社員時代には会社が担当していた業務をすべて自分で行う必要があります。測量業者登録後も、事業年度終了後3ヶ月以内に財務報告書を提出する義務があります。
これらの事務作業は想像以上に時間を取られるため、税理士や行政書士などの専門家に一部を委託することも検討しましょう。経営管理の負担を軽減することで、本業の測量業務に集中できます。
測量士として独立を成功させるには、資格取得・実務経験・測量業者登録・機材準備の4ステップを着実に進めることが重要です。
独立後の安定経営には、公共事業の入札、民間企業との取引、同業者との連携、Web集客など複数の営業チャネルを活用しましょう。特に実務経験中に築いた人脈が、独立直後の受注を左右します。
開業資金は余裕を持って準備し、常勤測量士の配置要件や事務作業の負担なども事前に理解しておくことが大切です。
計画的な準備と戦略的な営業活動により、測量士の独立は年収500万円〜1000万円以上を目指せる魅力的なキャリアです。本記事を参考に、着実に独立への準備を進めてください。
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