凍害（とうがい）とは？土木の専門用語をわかりやすく解説！

コンクリート構造物の劣化や表面の剥離を見つけたとき、それが凍害によるものかどうか判断に迷うことはないでしょうか。

凍害とは、水分の凍結融解によってコンクリートが劣化する現象です。放置すると構造物の強度低下につながるため、早期の対策が必要です。

そこで、この記事では凍害について知りたい方へ向けて、凍害の定義や発生メカニズム、症状、対策方法について解説します。凍害への理解を深める参考としてみてください。

凍害とは

凍害とは、コンクリート構造物内部の水分が凍結と融解を繰り返すことで劣化する現象です。

主に寒冷地で発生し、橋やダム、道路などの構造物の耐久性や安全性に大きな影響を与えます。

凍害の定義

凍害とは、コンクリート内部の水分が凍結する際に体積膨張し、材料を内側から破壊する劣化現象を指します。

水は凍ると約9%体積が増加します。この膨張圧力によってひび割れや剥離などの損傷が発生します。

凍害は構造物の美観を損なうだけでなく、強度低下にもつながる深刻な問題です。

凍害の発生メカニズム

凍害は、コンクリート内部に侵入した水分が凍結と融解を繰り返すことで発生します。

雨水や雪解け水がコンクリートの隙間から内部に浸透し、気温が氷点下になると凍結して体積が膨張します。膨張した氷がコンクリート内部に圧力をかけ、微細なひび割れを発生させます。

気温が上昇すると氷は融解し、さらに奥深くまで水分が浸透します。このサイクルが繰り返されることで、ひび割れは徐々に拡大していきます。

寒暖差が大きい地域ほど凍結融解サイクルの回数が増えるため、凍害のリスクが高まります。

凍害の種類

凍害には大きく分けて2つの種類があります。

発生する時期や原因が異なるため、それぞれの特徴を理解することが重要です。

初期凍害

初期凍害とは、コンクリートの打設後間もない時期に発生する凍害です。

コンクリートは打設後、徐々に硬化して強度を獲得していきます。しかし硬化が十分に進んでいない段階で凍結すると、内部の水分が凍結膨張してコンクリート組織を破壊します。

特に冬季の施工では、打設直後のコンクリートが気温低下により凍結するリスクが高まります。初期凍害を受けたコンクリートは、本来の強度を発揮できなくなります。

そのため寒冷地での施工時には、適切な養生や保温対策が必要になります。

凍結融解作用による凍害

凍結融解作用による凍害とは、硬化したコンクリートが長期間にわたって凍結と融解を繰り返すことで発生する凍害です。

コンクリート内部に浸透した水分が、気温の変化により凍結と融解を繰り返します。このサイクルが何度も繰り返されることで、徐々にコンクリートが劣化していきます。

初期凍害とは異なり、完成後の構造物に発生する劣化現象です。寒冷地では冬季と春先の温度変化により、このサイクルが頻繁に発生します。

長期間放置すると表面の剥離や構造体の損傷につながるため、定期的な点検と補修が必要です。

凍害の症状

凍害によってコンクリート構造物にはさまざまな症状が現れます。

主な症状は下記の3つです。

• ひび割れ
• スケーリング
• ポップアウト

それぞれの症状について詳しく説明していきます。

ひび割れ

ひび割れとは、コンクリート表面や内部に亀裂が入る症状です。

凍害によるひび割れは、内部の水分が凍結膨張することで発生します。最初は微細な亀裂ですが、凍結融解サイクルが繰り返されることで徐々に拡大していきます。

ひび割れから雨水がさらに浸入すると、凍害の進行を加速させます。放置すると構造体の強度低下につながるため、早期の補修が必要です。

スケーリング

スケーリングとは、コンクリート表面が薄片状に剥離する症状です。

表層部分の水分が凍結融解を繰り返すことで、表面のモルタル層が徐々に剥がれ落ちていきます。剥離は数ミリ程度の薄い層から始まり、進行すると広範囲に及びます。

スケーリングが進行すると、内部の骨材が露出して構造物の劣化が加速します。特に道路や駐車場などの水平面で発生しやすい症状です。

ポップアウト

ポップアウトとは、コンクリート表面が円錐状に欠け落ちる症状です。

コンクリート内部の骨材が吸水性の高い材料の場合、骨材内部の水分が凍結膨張します。この圧力によって骨材周辺のコンクリートが押し出され、表面が円錐状に剥落します。

ポップアウトは直径数センチ程度の穴となって現れます。見た目の劣化だけでなく、そこから水分が浸入して凍害が拡大する原因となります。

凍害が発生しやすい条件

凍害は特定の条件下で発生しやすくなります。

主な条件は下記の3つです。

• 寒冷地域
• 冬季から春先
• 水分が滞留しやすい場所

それぞれの条件について詳しく説明していきます。

寒冷地域

寒冷地域は気温が氷点下になる日が多く、凍害が発生しやすい環境です。

特に北海道や東北地方などの積雪寒冷地では、冬季に長期間氷点下の気温が続きます。これらの地域では凍結融解サイクルの回数が多くなるため、凍害のリスクが高まります。

また山間部や標高の高い地域も気温が低くなりやすく、注意が必要です。寒冷地域でコンクリート構造物を建設する際には、凍害対策が不可欠となります。

冬季から春先

冬季から春先にかけては、凍結融解サイクルが頻繁に発生する時期です。

冬季は気温が氷点下になり、コンクリート内部の水分が凍結します。春先になると日中の気温上昇により融解し、夜間に再び凍結するというサイクルを繰り返します。

この時期は一日の寒暖差が大きくなるため、凍結融解の回数が増加します。特に2月から4月にかけては凍害が進行しやすい時期として注意が必要です。

水分が滞留しやすい場所

水分が滞留しやすい場所は、凍害が発生しやすい条件となります。

橋の床版や道路の水平面など、雨水や雪解け水が溜まりやすい箇所では水分の浸透量が多くなります。またひび割れや継ぎ目などの欠陥部分も、水分が侵入しやすい場所です。

水はけの悪い構造や排水設備が不十分な場所では、コンクリート内部に水分が長時間留まります。水分量が多いほど凍結時の膨張圧力が大きくなるため、凍害のリスクが高まります。

凍害対策

凍害を防ぐためには、適切な対策を講じることが重要です。

主な対策は下記の3つです。

• 施工時の対策
• 定期メンテナンス
• 防水（塗装）工

それぞれの対策について詳しく説明していきます。

施工時の対策

施工時の対策は、凍害を未然に防ぐために最も重要な取り組みです。

コンクリートの配合では、空気連行剤（AE剤）を使用して微細な気泡を均一に分散させます。この気泡が凍結時の膨張圧力を吸収し、凍害を軽減する効果があります。

また水セメント比を低くすることで、コンクリートの密実性を高めて水分の浸透を防ぎます。冬季施工では、打設後のコンクリートを防寒（保温）養生して初期凍害を防止することが必要です。

定期メンテナンス

定期メンテナンスは、凍害の早期発見と進行防止に有効な対策です。

専門家による定期的な点検により、ひび割れや表面の剥離などの初期症状を早期に発見できます。発見された損傷箇所は、すぐに補修することで凍害の拡大を防ぐことができます。

特に寒冷地では、冬季前と春先の点検が重要です。排水設備の清掃や、水分が滞留しやすい箇所のチェックも併せて行います。

定期的なメンテナンスにより、構造物の寿命を延ばすことが可能です。

 防水（塗装）工

防水（塗装）工は、コンクリート表面への水分浸透を防ぐ有効な対策です。

撥水性や防水性の高い材料を使用することで、雨水や雪解け水の浸入を抑制します。防水層や塗膜がコンクリート表面を保護し、凍害の発生リスクを低減させます。

ただし防水層や塗膜は経年劣化により効果が低下するため、定期的な更新が必要です。一般的には5年から10年程度で再施工を行うことが推奨されます。

防水（塗装）工事と定期メンテナンスを組み合わせることで、より効果的な凍害対策となります。

凍害の補修方法

凍害が発生した場合は、適切な補修を行う必要があります。

凍害の種類によって補修方法が異なります。

• 初期凍害の補修
• 凍結融解作用の補修

それぞれの補修方法について詳しく説明していきます。

初期凍害の補修

初期凍害の補修は、損傷の程度によって方法が異なります。

軽度の初期凍害であれば、表面を研磨して樹脂系の浸透性材料で保護する方法が有効です。損傷が深い場合は、劣化したコンクリートを除去して新しいコンクリートで打ち替える必要があります。

初期凍害を受けたコンクリートは本来の強度を発揮できないため、構造上重要な部位では慎重な診断が必要です。専門家による調査を行い、適切な補修方法を選定することが重要です。

補修後は再発防止のため、適切な養生管理や防水処理を施すことが推奨されます。

凍結融解作用の補修

凍結融解作用による凍害の補修は、損傷箇所の修復と再発防止が目的です。

ひび割れには樹脂注入工法を用い、内部まで充填して水分の浸入を防ぎます。スケーリングやポップアウトが発生した箇所は、劣化部分を除去してポリマーセメントモルタルなどで断面修復を行います。

広範囲に損傷が及んでいる場合は、表層部分を全面的に打ち替える方法も検討します。補修後は防水（塗装）工を施して、表面から水分が浸透しないよう保護することが重要です。

定期的な点検により補修箇所の状態を確認し、必要に応じて追加の処置を行います。

まとめ｜凍害とは何かを理解し適切な対策を

凍害とは、コンクリート構造物内部の水分が凍結融解を繰り返すことで劣化する現象です。

初期凍害と凍結融解作用による凍害の2種類があり、それぞれ発生時期や原因が異なります。症状としては、ひび割れ、スケーリング、ポップアウトなどが代表的です。

凍害を防ぐためには、施工時の対策、定期メンテナンス、防水（塗装）工が有効です。特に寒冷地域や冬季から春先にかけては注意が必要となります。

万が一凍害が発生した場合は、早期に適切な補修を行うことで進行を抑えることができます。凍害のメカニズムを理解し、予防と補修の両面から構造物を保護していきましょう。