施工業者のための六価クロム溶出試験の義務と3つの実施タイミング

六価クロム
  • 六価クロム溶出試験はいつ必要なのか
  • 法律上の義務なのか任意なのか
  • 違反した場合のリスクは何か

このようなお悩みはありませんか?

六価クロム溶出試験は、セメント系固化材を使用した地盤改良工事において環境汚染と健康被害を防止するための重要な法的義務です。適切なタイミングで試験を実施し、基準値を遵守することで環境リスクを回避できます。

そこで、この記事では建設・土木業界の担当者向けに六価クロム溶出試験の義務化基準や実施方法、対応義務について詳しく解説します。工事の適正な実施と法令遵守の参考として、ぜひ最後までお読みください。

目次

六価クロム溶出試験とは?

六価クロム溶出試験とは、主にセメント系固化材を使用した地盤改良工事などにおいて、土壌中に六価クロムという有害物質が溶け出す可能性を調査するための試験です。この試験は環境庁告示第46号に基づいて実施される公的な試験方法となっています。

環境庁告示第46号溶出試験とは

環境庁告示第46号溶出試験は、土壌や廃棄物から有害物質がどの程度溶け出すかを測定する標準的な試験方法です。この試験は1991年(平成3年)8月23日に環境庁(現環境省)から告示第46号として公布され、土壌環境基準や土壌汚染対策法、廃棄物処理法における溶出量の測定方法として広く採用されています。

六価クロム溶出試験においては、この環境庁告示46号の方法に従って実施され、得られた検液中の六価クロム濃度が土壌環境基準値である0.05mg/Lを超えるかどうかで評価されます。国土交通省の実施要領においても、セメント系固化材を用いた地盤改良工事の安全性確認のための標準的な手法として採用されています。

出典:環境省|検液の作成方法について

試料の作成手順

試料の作成は、土壌試料を適切に処理して分析に適した状態にする工程です。具体的な手順は以下のとおりです。

  1. 採取した土壌を風乾します。風乾の温度は30℃を超えない温度で行います。
  2. 風乾した土壌から中小礫、木片等を除去します。
  3. 土塊や団粒を粗砕します。ただし、土粒子をすりつぶすような過度な粗砕は行いません。
  4. 非金属製の2mmの目のふるいを通過させます。
  5. ふるいを通過した土壌を十分に混合して均質化します。

この工程で得られた試料を用いて次の段階に進みます。

溶出試験の実施手順

溶出試験は、試料から有害物質がどの程度水中に溶け出すかを調べる工程です。具体的な手順は以下のとおりです。

  1. 試料と溶媒を重量体積比10%の割合で混合します。溶媒は精製水に塩酸を加え、水素イオン濃度指数(pH)が5.8以上6.3以下としたものを使用します。
  2. 混合液が500ml以上となるように調製します。
  3. 振とう容器は溶媒の体積のおおむね2倍の容量のものを使用します。
  4. 調製した試料液を常温(おおむね20℃)常圧(おおむね1気圧)で振とう機を用いて振とうします。
  5. 振とう機は、振とう回数を毎分約200回、振とう幅を4cm以上5cm以下に調整し、振とう方向は水平方向とします。
  6. 6時間連続して振とうを行います。

この振とう操作により、土壌中の溶出しやすい成分が溶媒中に移行します。

検液の作成と分析手順

検液の作成は、溶出試験後の試料液から土壌粒子を分離し、分析に適した清澄な液体を得る工程です:

  1. 振とう後の試料液を10分から30分程度静置します。
  2. 毎分約3,000回転(3,000重力加速度相当)で20分間遠心分離します。
  3. 遠心分離後の上澄み液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過します。メンブレンフィルターの直径は90mmを使用し、ろ過開始から30分間は交換しません。
  4. ろ過して得られたろ液を取り、これを検液とします。
  5. 検液中の六価クロム濃度をジフェニルカルバジド吸光光度法などによって測定します。
  6. 測定結果を土壌環境基準値(0.05mg/L)と比較して評価します。

この一連の手順により、土壌から溶出する六価クロムの量を科学的に測定し、環境基準との適合性を判断することができます。

国土交通省による六価クロム溶出試験の義務化基準

国土交通省は「セメント及びセメント系固化材を使用した改良土の六価クロム溶出試験実施要領(案)」を通達として発出し、六価クロム溶出試験の実施を義務付けています。

この基準は公共工事において環境汚染と健康被害を防止するための重要な指針です。

出典:国土交通省|セメント及びセメント系固化材を使用した改良土の六価クロム溶出試験実施要領(案)

六価クロム溶出試験の対象材料

六価クロム溶出試験の対象となる材料は以下の通りです。

  • 普通ポルトランドセメント
  • 高炉セメント
  • その他のセメント系固化材
  • セメントを含有成分とする石灰系固化材
  • 上記に添加剤を加えたもの

これらの材料は土との混合により六価クロムを溶出する可能性があるため、試験と管理が必要です。

六価クロム溶出試験が必要な工事

試験が必要な主な工事は以下の通りです。

  • 深層混合処理工法(粉体噴射撹拌、高圧噴射撹拌、スラリー撹拌)
  • 表層安定処理工法
  • 路床安定処理工法
  • 上層・下層路盤工(セメント安定処理)
  • 改良土による盛土、埋戻し、土地造成工事
  • 地中連続壁工(ソイルセメント柱列壁)

ただし、セメント系材料を使用しない工法(石灰パイル工法、水ガラス系薬液注入工法など)は対象外です。

六価クロム溶出試験の実施タイミング

六価クロム溶出試験は国土交通省の実施要領に基づき、以下の3つのタイミングで実施します。

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試験方法実施時期基本材齢目的
試験方法1配合設計段階材齢7日使用予定の固化材が環境基準を満たすか確認
試験方法2施工後材齢28日実際に施工された改良土の溶出量確認
試験方法3
(タンクリーチング試験)
大規模工事や
基準超過時
材齢28日以降最大溶出値箇所の追加確認

基本的に試験方法1で環境基準(0.05mg/L)以下であれば後続の試験は免除可能です。ただし、火山灰質粘性土(関東ローム、九州灰土など)を改良する場合は、すべての試験工程が必要となります。また、改良土を再利用する場合も使用前に溶出試験による安全性確認が求められます。

試験方法1

配合設計段階で実施する環境庁告示46号溶出試験(材齢7日を基本) これは工事前の配合設計時に行う試験で、使用予定の材料が基準を満たすか確認します。

試験方法2

施工後に実施する環境庁告示46号溶出試験(材齢28日を基本) 実際に施工された改良土からの六価クロム溶出量を確認するための試験です。

試験方法3

タンクリーチング試験 大規模工事や基準超過時に実施する追加試験で、塊状にサンプリングした試料を用います。

六価クロム溶出試験にかかる費用と所要期間

六価クロム溶出試験の実施は法的に義務付けられている重要な工程ですが、その費用や期間についても事前に把握しておくことが工事計画上重要です。

ここでは、六価クロム溶出試験の費用相場や所要期間について解説します。

試験費用の相場

六価クロム溶出試験の費用は、試験の種類や依頼先によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

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試験種類費用相場
(1検体あたり)
備考
環境庁告示46号溶出試験15,000円~25,000円最も一般的な試験方法
タンクリーチング試験30,000円~50,000円大規模工事で必要な追加試験
緊急分析(特急)通常料金の1.5~2倍急ぎの場合の追加料金

これらの費用には試料の採取費用は含まれていないため、サンプリングが必要な場合は別途費用が発生します。

また、試験個数が多くなる大規模工事では総額が大きくなるため、工事予算に組み込んでおく必要があります。

国土交通省の実施要領では「六価クロム溶出試験費等については、共通仮設費の技術管理費等に計上する」と明記されています。

出典:国土交通省|セメント及びセメント系固化材を使用した改良土の六価クロム溶出試験実施要領(案)

結果が出るまでの標準的な日数

六価クロム溶出試験を依頼してから結果が出るまでの標準的な日数は以下の通りです。

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試験種類標準所要日数特急対応の場合
環境庁告示46号溶出試験7~10営業日3~5営業日
タンクリーチング試験14~21営業日7~10営業日

ただし、これらは分析機関に試料が到着してからの日数であり、サンプリングから試料発送までの時間や輸送時間は含まれていません。また、試験機関の混雑状況によっても変動します。特に年度末や工事の繁忙期には分析機関が混雑するため、余裕を持ったスケジュール設定が重要です。

六価クロムの環境リスクと健康被害

六価クロムは環境中に放出されると深刻な環境汚染や健康被害をもたらす危険性がある物質です。その影響は広範囲に及び、多くの国で厳しく規制されています。ここでは六価クロムが持つリスクについて解説します。

  • 六価クロムの特性と毒性
  • 環境への影響
  • 人体への健康被害

それぞれ説明していきます。

六価クロムの特性と毒性

六価クロムは、強い酸化力を持つ化学物質で、自然界にはほとんど存在せず、主に工業活動や特定の建設資材から発生します。水に非常に溶けやすく、一度土壌や水系に入ると広範囲に拡散する性質があります。この物質は高い毒性を持ち、国内外の環境基準で厳しく管理されている有害物質です。

環境への影響

環境への影響としては、六価クロムが水系に流入すると、水生生物に対して急性・慢性の毒性を示します。また、土壌環境では微生物活動を阻害し、生態系のバランスを崩す原因になります。さらに、土壌中で長期間残留する可能性があり、継続的な汚染源となることが懸念されています。

人体への健康被害

人体への健康被害は特に重大で、六価クロムは国際がん研究機関(IARC)によってグループ1「ヒトに対して発がん性がある物質」に分類されています。特にクロム酸製造従事者における肺がんは職業がんとして認定されています。

また、皮膚接触により発赤や発疹、炎症が起こり、蒸気を吸い込むと鼻の粘膜やのどに炎症が生じ、長期的な曝露では鼻中隔の組織にまで炎症が及ぶことがあります。このような健康リスクから、水道水質基準や水質環境基準では0.05mg/L以下という厳しい基準が設けられています。

出典:国際がん研究機関(IARC)|:IARC Monographs on the Identification of Carcinogenic Hazards to Humans

六価クロム溶出試験の結果判定と対応義務

六価クロム溶出試験の結果は、環境保全と人体への健康被害防止のために厳格に判定され、基準値超過時には適切な対応が義務付けられています。

この試験結果に基づく適切な対応は、法令遵守の観点からも重要です。

六価クロム基準超過時の届出義務

六価クロム溶出試験の結果が土壌環境基準値である0.05mg/Lを超過した場合、基準値超過の事実を関係機関に報告する義務が生じます。公共工事の場合、施工者は発注者である国土交通省や地方自治体の担当部署に速やかに報告しなければなりません。また、土壌汚染対策法の適用を受ける場合は、都道府県知事(または政令指定都市の長)への届出が必要となります。

報告内容には、溶出試験結果、汚染の範囲、現場の状況、地下水の利用状況などを含めることが求められます。特に周辺に飲用井戸がある場合や地下水の利用が多い地域では、より詳細な報告と迅速な対応が必要です。

六価クロム検出時の必要な工事対応

六価クロム溶出試験で基準値(0.05mg/L)を超過した場合、以下の対策工事が義務付けられます。

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発覚タイミング必要な対策工事詳細
配合設計段階配合設計の見直し・セメント系固化材の種類変更
・添加量の調整
・高炉セメントなど溶出量の少ない固化材への変更
施工中工事の一時中断と対策・還元剤の添加
(六価クロムを三価クロムに還元)
・施工方法の変更
・使用材料の変更
施工後改良土の処理・汚染土壌の掘削除去
・封じ込め処理
・遮水壁の設置
・不溶化処理

対策実施後は必ず再度溶出試験を行い、基準値を満たすことを確認する必要があります。基準値を下回るまで対策と確認を繰り返す義務があります。

記録保存の義務と保管期間

六価クロム溶出試験に関する記録は、適切に保存する義務があります。保存すべき記録には、試験結果報告書、試験実施時の写真、試料採取位置図、試験機関の証明書、対策工事を実施した場合はその内容と効果確認の結果などが含まれます。

記録の保管期間は、一般的な公共工事においては工事完了後5年間とされていますが、土壌汚染対策法が適用される場合はより長期間の保管が求められることがあります。また、地方自治体によっては独自の条例で保管期間を定めている場合もあります。

よくある質問|六価クロム溶出試験の義務について

セメント系固化材を使用した地盤改良工事における六価クロム溶出試験に関して、多くの実務者がよく疑問に思う点について回答します。

六価クロム溶出試験が免除されるケースはあるか

配合設計段階の試験で基準値未満であれば、施工後の試験が免除される場合があります。ただし、火山灰質粘性土の改良では全ての試験が必須となります。

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条件免除の可否備考
配合試験で基準値未満一部免除可施工後の試験(試験方法2・3)が免除可能
火山灰質粘性土の改良免除不可全ての試験が必須(試験方法1・2・3)
セメント系材料不使用の工法全て免除石灰パイル工法、水ガラス系薬液注入工法など
小規模工事原則免除なし但し自治体等により独自基準がある場合あり
同一材料・同一土質の実績原則免除なし土質条件や使用材料が同一でも試験が必要

試験結果の有効期限はどのくらいか

六価クロム溶出試験結果の有効期限は法的に明確な規定はありませんが、一般的に配合設計時の試験結果は6ヶ月~1年程度とされています。

材料ロットの変更や土質条件の変化があった場合は再試験が必要です。

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試験種類有効期限適用条件
配合設計試験結果6ヶ月~1年同一材料・同一土質の場合
施工後の試験結果工事完了まで工法変更や材料変更時は再試験必要
汚染確認後の対策工事確認試験即時基準値を下回るまで繰り返し必要
改良土再利用時の試験結果利用時毎保管期間や条件変化で再試験必要

違反した場合のペナルティと罰則について

六価クロム溶出試験義務に違反した場合、公共工事では契約違反となり工事中止や指名停止などの措置を受けることがあります。土壌汚染対策法適用時には、法的罰則も科される可能性があります。

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違反内容適用法令ペナルティ・罰則
試験未実施(公共工事)契約違反工事中止命令、契約解除、指名停止
基準超過の未報告土壌汚染対策法1年以下の懲役または100万円以下の罰金
対策工事の未実施土壌汚染対策法改善命令、行政処分、罰金
記録の不正各種関連法令行政処分、信用失墜、損害賠償責任

まとめ:六価クロム溶出試験の重要性を理解しよう!

六価クロム溶出試験は、セメント系固化材を使用する地盤改良工事において環境と健康を守るために不可欠な試験です。環境庁告示第46号に基づき実施され、国土交通省の基準に従って配合設計段階と施工後に行われます。

基準値(0.05mg/L)を超過した場合は対策工事が義務付けられ、試験結果の記録保存も必要です。特に火山灰質粘性土では全ての試験段階が必須となります。

工事計画時から試験実施を織り込み、適切な材料選定と試験管理を行うことで、環境汚染を防止し法令遵守を実現できます。六価クロム溶出試験の義務を正しく理解し実践することが、安全な工事と環境保全の両立につながります。

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この記事を書いた人

売上げ30億円規模の建設会社で11年間施工管理従事。億越えの土木公共工事を数多く竣工。2024年Liftco合同会社設立、代表として元請土木建設会社の書類支援サービスを展開しながら、SEOライティングでマーケティングやリクルート支援を行う。

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