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「取水施設とは何か?」と調べたとき、専門用語が多くてよくわからないと感じたことはないでしょうか。
取水施設は、私たちの生活を支える水道システムの起点となる重要な設備です。種類や仕組みを理解することで、水道インフラ全体の構造が把握しやすくなります。
この記事では、取水施設の定義・種類・ダムや導水施設との違い・設置条件について、図や表を交えてわかりやすく解説します。水道や土木に関わる方の参考としてご活用ください。

取水施設(しゅすいしせつ)とは、河川や湖沼・貯水池などの地表水や地下水から水を取り入れ、導水施設へ供給するための設備です。
取水施設で取り入れられた水は「原水」と呼ばれます。
原水はまだ飲料に適した状態ではないため、導水施設を通じて浄水場へ運ばれ、処理されたのちに私たちのもとへ届けられます。
取水施設は、安全な水を安定供給するための、水道システムの出発点となる重要な施設です。

取水施設は、水道法で定められた水道施設のひとつです。
水道施設は、下記の6つの施設で構成されています。
| 施設 | 役割 |
| 貯水施設 | ダムや溜池などに水を蓄え、取水を安定させる |
| 取水施設 | 河川・湖沼などから原水を取り入れる |
| 導水施設 | 原水を浄水場まで送る |
| 浄水施設 | 原水を水道法の基準に適合した水に処理する |
| 送水施設 | 浄水を配水池まで送る |
| 配水施設 | 浄水を各家庭・施設へ届ける |
取水施設はこのなかで、水源から原水を取り入れる工程を担っています。
洪水時や渇水時においても、計画取水量を安定的に確保できることが取水施設に求められる重要な条件です。

ダムと取水施設は、役割が異なる別々の施設です。
| ダム | 取水施設 | |
|---|---|---|
| 役割 | 河川をせき止めて水を貯める | 貯めた水や河川の水を取り入れる |
| 分類 | 貯水施設 | 取水施設 |
| イメージ | 水のタンク | タンクから水を引き出す蛇口 |
ダムは「水を貯める」施設であり、取水施設は「水を取り入れる」施設です。
ダム単体では水を取り出す機能を持たないため、ダムに貯めた水を利用するには取水施設が必要です。
このように、ダムと取水施設はそれぞれ独立した施設でありながら、セットで機能することが多い設備です。
取水施設が水を取り入れる水源には、大きく「地表水」と「地下水」の2種類があります。
水源の種類によって、使用する取水施設の形式や設備が異なります。
地表水とは、河川・湖沼・貯水池など、地表に存在する水のことです。
地表水からの取水は、水量が豊富で大規模な取水に適している一方、降雨や季節によって水量・水質が変動しやすい特徴があります。
また、洪水時には土砂や異物が混入しやすいため、取水口の位置や設備の選定に注意が必要です。
地下水とは、地中に浸透した雨水などが地層に蓄えられた水のことです。
地下水の取水施設には、主に以下の種類があります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 伏流水 | 河川敷の地中に浸透した水を集水埋渠で取水する |
| 浅井戸 | 深さ10〜30m程度の井戸から自由地下水を取水する |
| 深井戸 | 深さ30m以上の井戸から被圧地下水を取水する |
地下水は地表水と比べて水質が安定しており、濁りが少ない点が特徴です。
一方で、過剰に汲み上げると地盤沈下を引き起こす恐れがあるため、取水量の管理が重要です。
取水施設には、水源の種類や規模に応じてさまざまな形式があります。
主な種類は下記の6つです。
それぞれの特徴を詳しく解説します。
取水堰(しゅすいぜき)とは、河川をせき止めて水位を上げ、安定した取水を行うための施設です。
河川の水位が低い場合でも、堰によって水位を一定に保つことで、必要な量の水を確実に取り入れることができます。
大規模な構造物になることが多く、魚の遡上を妨げないよう「魚道」を必要に応じて併設することが求められています。
取水門(しゅすいもん)とは、河川や湖沼の水位・河床が安定した場所に設置されるゲート式の取水施設です。
ゲートの開閉によって取水量を調整することができます。
比較的中・小規模の取水に適しており、構造がシンプルで管理しやすい点が特徴です。
取水塔(しゅすいとう)とは、貯水池や湖沼などに円形または楕円形の塔を設け、塔の側壁に開けられた取水口から水を取り入れる施設です。
取水口を深さ方向に複数設けることで、水質の良い深さを選んで取水できる「選択取水」が可能です。
河川の中・下流域や湖沼での大規模な取水に適しています。
取水枠(しゅすいわく)とは、河川や湖沼の水底に箱状または円筒状の枠を沈めて取水する施設です。
構造が比較的シンプルで施工しやすい一方、表面の水を取り入れることができず、沈降物による目詰まりが起きやすいという特徴があります。
河床や湖底の変化が少ない安定した場所での取水に適しています。
取水管渠(しゅすいかんきょ)とは、河川の岸近くの水中に取水管を設けて取水する施設です。
水位変化が少ない河川での少量取水(目安:1万m3/日以下)に適しています。
上記以外にも、下記のような取水施設があります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| ダム取水施設(斜樋・底樋) | ダム堤体に設置され、高い水圧に対応したゲートで取水する |
| 集水埋渠 | 河川敷の地中に管を埋設し、伏流水を集めて取水する |
| 浅井戸 | 深さ10〜30m程度から自由地下水を取水する |
| 深井戸 | 深さ30m以上から被圧地下水を取水する |
これらは水源の特性や取水規模に応じて選択され、複数の施設を組み合わせて使用する場合もあります。
取水施設の設置場所は、下記の4つの条件をもとに選定されます。
それぞれ詳しく解説します。
取水施設は、水道法第5条において「できるだけ良質の原水を必要量取り入れることができるもの」と定められています。
そのため、渇水時でも計画取水量が確保でき、将来にわたって水質汚濁の恐れがない地点を選ぶ必要があります。
また、水源には既得の水利権や漁業権が設定されている場合があるため、事前に権利関係の確認と調整が必要です。
取水口が土砂で塞がれたり、洪水によって施設が損傷したりすると、安定した取水ができなくなります。
農林水産省の技術書では、農業用取水施設(頭首工)の位置選定条件として下記が挙げられています。
出典:農林水産省|土地改良事業計画設計基準 設計「用水」技術書
取水施設は長期にわたって安定的に運用することが求められるため、日常的な点検・修繕がしやすい地点を選ぶことが重要です。
水道法第5条第2項においても、水道施設の位置は「布設及び維持管理ができるだけ経済的かつ容易になるよう」定めることとされています。
取水施設の設置にあたっては、建設費だけでなく、長期的な維持管理にかかる費用も考慮する必要があります。
農林水産省の技術書では「基礎地盤が良好で構造上の安定が得られ、かつ工事費が安くなる地点」を選定条件のひとつとして挙げており、経済性と安全性のバランスが重要とされています。
出典:農林水産省|土地改良事業計画設計基準 設計「用水」技術書
取水施設についてよくある質問をまとめました。
ダムは水を「貯める」施設、取水施設は貯めた水や河川の水を「取り入れる」施設です。
ダムは貯水施設に分類され、取水施設とは異なる役割を持ちますが、ダムに貯めた水を利用する際には取水施設がセットで必要となります。
取水施設は水源から原水を「取り入れる」施設、導水施設は取り入れた原水を浄水場まで「送る」施設です。
水道システムでは、取水施設で取り入れた原水が導水施設を通じて浄水場へ運ばれます。
それぞれ設置場所や取水規模が異なります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 取水堰 | 河川をせき止めて水位を上げ、大規模な取水を安定して行う |
| 取水門 | ゲートの開閉で取水量を調整する。中・小規模の取水に適する |
| 取水塔 | 貯水池や湖沼に設置する塔。深さを選んで取水できる |
| 取水枠 | 水底に沈める箱状の設備。構造がシンプルで小・中規模の取水に使われる |
基本的な構造は共通していますが、用途・規模・管理方法が異なります。
農業用は田畑への灌漑を目的とした季節的な取水が多く、水道用は年間を通じて安定した水量・水質の確保が求められます。
取水制限とは、渇水時に取水施設から取り入れる原水の量を減らす措置のことです。
水不足が深刻な場合に実施され、水道や農業用水の供給量に影響が出ることがあります。
本記事では、取水施設の定義・種類・設置条件・維持管理について解説しました。
取水施設は、河川や湖沼などの水源から原水を取り入れ、導水施設へ供給する水道システムの起点となる重要な施設です。
取水堰・取水門・取水塔・取水枠など、水源の種類や規模に応じてさまざまな形式があり、複数を組み合わせて使用する場合もあります。
取水施設についてさらに詳しく知りたい方は、農林水産省や水道法の関連資料もあわせてご参照ください。
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