腹起しとは?切梁との違いと役割をやさしく解説

「はらおこし」と読むこの部材、土木の現場で見かけても正確な役割まで説明できる人は少ないのではないでしょうか。腹起しは、山留め工事で土圧を受け止めて切梁へ力を伝える重要な部材です。

この記事では意味・読み方から、切梁やブラケットとの関係、材料の種類、施工の注意点まで解説します。

目次

腹起し(はらおこし)とは?意味と読み方

腹起しとは、土留め工事において山留め壁に沿って水平に取り付けられる横架材です。壁にかかる土圧を面で受け止め、切梁(きりばり)へ力を集約して伝えます。

まずは読み方・語源・基本的な役割から順に確認していきます。

腹起しの読み方と語源

腹起しは「はらおこし」と読みます。英語では「waling(ウォーリング)」と呼ばれます。

名前の由来は、土留め壁の「腹(内面)」を「起こす(支える)」という意味からとされています。土圧で内側に押されようとする壁面を、腹を抱えて支えるイメージです。現場では「腹起こし」と表記されることもありますが、どちらも同じ部材を指します。

土留め工事における腹起しの役割

地盤を掘削する際、周囲の土が崩れないよう山留め壁を設けます。

壁には地盤全体から均等に土圧がかかりますが、支持部材(切梁)は一定の間隔でしか設置できません。腹起しは壁面に連続して取り付けられることで、面で受けた土圧を線状に集約し、切梁の設置箇所へ効率よく伝えます。

腹起しが間に入ることで、山留め壁の変形・崩壊を防ぎます。主働土圧(しゅどうどあつ)と合わせて確認すると、力のかかり方への理解が深まります。

腹起しと切梁・ブラケットの関係

腹起しは単体では機能しません。切梁・ブラケットと組み合わせて、はじめて土留め支保工として成立します。3つの部材の役割を整理します。

スクロールできます
部材名読み方役割
腹起しはらおこし山留め壁から土圧を受け、切梁へ伝える
切梁きりばり腹起しから受けた力を対面の壁や地盤に伝えて支持する
ブラケットぶらけっと腹起しを下から支え、自重による脱落を防ぐ斜め材

それぞれの役割を詳しく見ていきます。

切梁との違い

腹起しと切梁はよく混同されますが、役割と設置方向が異なります。腹起しは山留め壁に密着して「壁に沿って横に走る部材」です。

切梁は腹起しから受けた力を掘削穴の対面へ水平に伝える「掘削穴を横断して支える部材」です。設置順序は腹起しが先で、切梁は腹起しに端部を当てて設置します。この順序を知っておくと、現場の施工手順が把握しやすくなります。

ブラケットの役割

ブラケットとは、腹起しを下から支える斜め材のことです。腹起しはH形鋼を横向きに使うため、自重に対して弱い向き(弱軸方向)になります。

そのままでは自重でたわんだり脱落したりする恐れがあるため、ブラケットで支えます。一般的にブラケットは腹起し1本に対して2個以上取り付け、腹起しの水平・鉛直を保ちます。腹起しが山留め壁からずれると土圧を均等に受けられなくなるため、確実に設置してください。

腹起しの材料と種類

腹起しに使われる材料は主に2種類です。現場の規模・掘削深さ・工期に応じて使い分けられます。

H形鋼の腹起し

最も一般的な腹起しは、H形鋼を横向きに使ったものです。H形鋼は曲げに強い断面形状で、水平方向の土圧を受けるのに適しています。シートパイル(鋼矢板)工法では壁の凹凸に合わせてフィラー(隙間材)を入れてから設置し、親杭横矢板工法では親杭のフランジにボルトで固定します。継手部分はジョイントプレートで補強し、強度を確保します。

出典:国土交通省 九州地方整備局|仮設構造物の設計

アルミ製腹起し(軽量タイプ)

アルミ製の腹起しは、鋼製に比べて大幅に軽量で、人力での組み立て・解体がしやすい特徴があります。

伸縮可能なアジャスタブルタイプもあり、様々な掘削幅に対応できます。掘削深さ2〜3m程度の比較的浅い開削工事や、重機が入れない狭小現場で選ばれることが多く、大規模・深い掘削では鋼製H形鋼が使われます。工事規模と搬入条件を踏まえて選定してください。

腹起しの施工で押さえたい注意点

腹起しの効果を最大限に引き出すには、取り付け精度が重要です。見落としやすい2つのポイントを確認します。

山留め壁との密着が大切な理由

腹起しは山留め壁に密着させて設置します。隙間があると土圧を均等に受けられず、壁が局所的に変形する恐れがあります。シートパイルの場合は波型の凹凸があるため、裏止め材やモルタルで隙間を充填してから設置します。密着状態の確認は、施工後の壁の安定性に直結する作業です。設置後は目視だけでなく、打診などで確認する習慣をつけましょう。

継手位置の選定

腹起しを複数本つなぐ場合、継手(ジョイント)は切梁の設置点に近い箇所に設けます。スパンの中間に継手を置くと大きな曲げモーメントがかかり、破損のリスクが高まります。継手部はジョイントプレートで補強し、せん断耐力を確認します。土留め工事では腹起しの変形や脱落が周辺への重大な影響につながるため、設計図に従った適切な位置への設置が求められます。

出典:国土交通省 九州地方整備局|仮設構造物の設計

腹起しについてよくある質問

腹起しはどのタイミングで設置・撤去するのですか?

腹起しは掘削が一定の深さに達した後、その段の切梁を設置する前に取り付けます。撤去は躯体の構築が完了し、埋め戻しが進んで土圧が管理できる状態になった段階で、切梁とともに上段から順に行うのが基本です。

腹起しのサイズ(断面)はどのように決まりますか?

腹起しの断面は、作用する土圧の大きさ・切梁の間隔(スパン)・掘削深さをもとに構造計算で決定します。一般にはH-300×300やH-350×350などのH形鋼が使用されますが、規模や地盤条件によって設計者が選定します。

腹起しと山留め壁の間に隙間ができた場合、どう対処しますか?

シートパイルなど凹凸のある壁面では、裏止め材の鉄板やモルタルで隙間を充填して密着させます。隙間を放置すると土圧が局所集中し壁の変形・崩壊リスクが高まるため、設置後に密着状態を必ず確認してください。

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この記事を書いた人

売上げ30億円規模の建設会社で11年間施工管理従事。億越えの土木公共工事を数多く竣工。2024年Liftco合同会社設立、代表として元請土木建設会社の書類支援サービスを展開しながら、SEOライティングでマーケティングやリクルート支援を行う。

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