支承(ししょう)とは?橋梁における役割・種類・維持管理を解説

橋梁の現場や設計図書で「支承」という言葉を見かけたものの、どんな部材でどんな役割を持つのかよくわからない——そんな方に向けてこの記事をまとめました。支承とは、橋梁の上部構造(橋桁)と下部構造(橋台・橋脚)の間に設置する部材です。橋を安全に支えるために欠かせない存在で、荷重の伝達・温度変化への対応・地震時の挙動に大きく関わります。この記事では、支承の定義・3つの基本機能・種類・損傷と維持管理まで現場で役立つ知識を解説します。

目次

支承(ししょう)とは何か

支承とは、橋梁において上部構造(主桁・主構)と下部構造(橋台・橋脚)の間に設置する部材のことです。

橋梁では上部構造と下部構造を直接固定してしまうと、温度変化による伸縮や地震時の変形に対応できません。支承を介在させることで、橋桁の変形を吸収しながら荷重を下部構造へ伝えることができます。

沓(くつ)とも呼ばれる

支承は「沓(くつ)」とも呼ばれます。英語では「shoe(シュー)」と表現されます。

現場では「沓座(くつざ)」という言葉も使われます。これは、下部構造(橋台・橋脚)の上に支承を設置する受け台部分を指します。支承と沓座はセットで機能する部位です。

上部構造と下部構造をつなぐ役割

橋梁は大きく上部構造と下部構造に分かれます。

上部構造は橋桁や路面など、実際に車両や人が通行する部分です。下部構造は橋台や橋脚など、上部構造を支える基礎的な部分です。支承はこの2つをつなぐ接合部として機能し、橋梁全体の力の流れを制御する重要な部材です。

支承に求められる3つの基本機能

支承には以下の3つの基本機能があります。

  • 機能1 荷重を下部構造へ伝達する
  • 機能2 橋桁の水平移動を吸収する
  • 機能3 橋桁の回転変形に追随する

それぞれ説明していきます。

荷重の伝達機能

支承の基本的な役割は、橋桁や車両の鉛直荷重を橋台・橋脚へ伝えることです。

橋の上を車両が通行すると、橋桁には鉛直方向の大きな荷重が加わります。また地震や風による水平荷重も発生します。支承はこれらの荷重を安全に下部構造へ伝達し、橋梁全体の安定を保つ役割を担います。

水平移動の吸収機能

支承は、温度変化による橋桁の伸縮を吸収する機能も持ちます。

橋桁は夏と冬で温度が大きく変わります。鋼製の橋桁は温度1℃の変化に対して鋼材の線膨張係数(約0.000012/℃)に応じて伸縮します。この変形を吸収しないと、橋桁や下部構造に過大な力が生じます。可動支承はローラーやすべり面を使って橋桁の水平移動を許容します。

回転変形への追随機能

支承は、車両通行時に橋桁がたわむ際に生じる回転変形にも追随します。

橋桁は車両荷重を受けると中央部が下方にたわみます。このたわみによって支点部分には回転変形が生じます。支承がこの回転に追随できない場合、支承部や橋桁に局所的な応力集中が起きます。支承はその構造によってこの回転を許容し、橋梁を安全に保ちます。

支承の種類と特徴

支承はその機能と材料によっていくつかの種類に分類されます。主な分類を以下の表で示します。

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分類軸種類特徴
可動性固定支承水平移動を拘束。橋桁の位置を固定する
可動性可動支承水平移動を許容。橋桁の伸縮に対応する
材料ゴム支承ゴムの弾性で荷重・変形を吸収。耐震性が高い
材料鋼製支承鋼材で構成。高荷重に対応できる

固定支承と可動支承の違い

固定支承と可動支承は、橋桁の水平移動を許容するかどうかで区別されます。

固定支承は橋桁が水平方向に移動しないよう拘束する支承です。橋全体のうち1箇所以上に設置し、橋桁の位置を固定します。可動支承はローラーやすべり面によって橋桁の水平移動を許容します。温度変化や地震による変形を吸収するために、固定支承と組み合わせて設置します。

ゴム支承の特徴

ゴム支承は、天然ゴムや合成ゴムを主材料とした支承です。

ゴムの弾性(伸縮性)を利用して、鉛直荷重の支持・水平移動の吸収・回転変形への追随という3機能を一体で担えます。鋼板とゴムを交互に積み重ねた積層ゴム支承は、耐震性が高く、近年の橋梁工事で多く採用されています。腐食に強く維持管理コストを抑えやすい点も特徴です。

鋼製支承の特徴

鋼製支承は、鋼材(鉄鋼)で構成された支承です。

大きな荷重を支持できる点が強みで、大型橋梁に多く使われてきました。ただし鋼材は腐食しやすく、定期的な塗装や防錆処理が欠かせません。支承部は雨水や埃が溜まりやすい環境にあるため、腐食による機能障害が起きやすい部位でもあります。現在では耐候性鋼材やゴムとの複合構造のものも採用されています。

支承の損傷と維持管理

支承は橋梁の中でも損傷が発生しやすい部位の一つです。適切な維持管理を行わないと、支承の機能が低下し、橋梁全体の安全性に影響します。

主な損傷の種類

支承で発生する主な損傷は以下の通りです。

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損傷の種類内容多い支承の種類
腐食・さび鋼材部分の腐食鋼製支承
ゴムの劣化・亀裂ゴム材の硬化・ひび割れゴム支承
異物の堆積土砂・ゴミの詰まりすべての支承
移動量の超過想定を超えた橋桁の移動可動支承
アンカーボルトの破断地震による固定部の破壊固定支承

定期点検のポイント

支承の定期点検では、外観から確認できる異常を早期に発見することが重要です。

主な点検項目は、腐食・さびの状況、ゴムの亀裂・変形・異常な圧縮、土砂・異物の堆積、アンカーボルトの状況です。橋梁定期点検は道路法に基づき5年に1回実施が義務づけられています。支承部は雨水が溜まりやすく腐食が進みやすいため、清掃と防錆処理の継続が損傷を防ぐ基本となります。

出典:__国土交通省 国土技術政策総合研究所|橋梁初級Ⅰ研修テキスト「支承・付属物等の損傷と技術的評価」__

支承に関連する橋梁用語の整理

支承を理解するために知っておきたい関連用語をまとめます。

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用語意味支承との関係
上部構造橋桁・床版など車両が通行する部分支承が支持する対象
下部構造橋台・橋脚など基礎的な構造物支承が荷重を伝える先
沓座(くつざ)下部構造上の支承を受ける台座部分支承が設置される受け台
伸縮装置橋桁の継ぎ目に設置する変形吸収装置支承と同じく変形吸収の役割を持つ
免震支承地震エネルギーを吸収する高機能支承積層ゴム等を使ったゴム支承の発展形
支承は橋のどこに設置されますか?

支承は橋梁の上部構造(橋桁)と下部構造(橋台・橋脚)の接合部に設置されます。1本の橋桁に対して複数箇所に取り付けられます。通常は固定支承と可動支承を組み合わせて設置し、橋桁の水平移動と荷重伝達を適切にコントロールします。

支承と伸縮装置の違いは何ですか?

支承は橋桁と橋台・橋脚の間に設置し、荷重の伝達・橋桁の移動吸収・回転への追随という3つの機能を担います。伸縮装置は橋桁の継ぎ目(遊間)部分に設置し、主に橋桁の伸縮を吸収して路面段差を防ぐ装置です。位置と機能が異なる別々の部材ですが、どちらも橋桁の変形に対応するために必要です。

支承はなぜ損傷しやすいのですか?

支承は橋梁の中でも最も厳しい環境に置かれる部材の一つです。路面からの雨水や土砂が集まりやすい位置にあり、常に荷重や振動を受け続けます。鋼製支承では腐食が、ゴム支承では紫外線や温度変化によるゴムの劣化が起きやすくなっています。定期的な清掃と防錆処理が損傷を防ぐ基本対策です。

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この記事を書いた人

売上げ30億円規模の建設会社で11年間施工管理従事。億越えの土木公共工事を数多く竣工。2024年Liftco合同会社設立、代表として元請土木建設会社の書類支援サービスを展開しながら、SEOライティングでマーケティングやリクルート支援を行う。

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